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【フロンティアファーマーズ特別編】 農家さんが一生懸命作る。だから私たちは一生懸命売るんです。

JA福島さくら 農産物直売施設「あぐりあ」
店長 遠藤 基州もとくにさん

毎日新鮮な野菜や果物が並び、多くの人が訪れる直売所。郡山市内には、JAが運営する店舗に加え、地域の商工会や民間の事業者、さらには生産者が直接営業する店舗まで、さまざまな直売所があります。

その中でも新しい施設として多くの人で賑わっているのが、市内安積町にあるJA福島さくらの農産物直売施設「あぐりあ」です。野菜や果物に加え、肉や魚、地元の銘菓など、さまざまな商品を取り揃えています。また、施設内には食事が楽しめるスペースもあるなど、幅広い世代の方々が足を運ぶ人気の施設です。

そんな「あぐりあ」を訪ね、遠藤基州店長に、お店ならではの取り組みや想いをうかがいました。

野菜も果物も肉も魚も揃う直売所

「あぐりあ」がオープンしたのは2021年3月16日。折しも首都圏では新型コロナウイルスの感染拡大に伴う2回目の緊急事態宣言が発令中で、初代店長として赴任した遠藤店長も、まずはその対策に苦慮したと言います。

「うちの店ではレジに並ぶ列を一ヵ所にさせてもらっていますが、これはコロナ対策の名残なんです。」

お店に並ぶ生産物は、市内一円から集まります。また、産地交流として田村市やいわき市の生産物も並びます。訪れるお客様は多くが市内在住の方ですが、須賀川市など隣接する市町村に加え、東北自動車道の郡山南インターチェンジに近いこともあり、首都圏などからの観光客が訪れることもあるといいます。地元の銘菓を並べているのは、そうしたお客様のニーズに応えるためです。

「直売所というと野菜のイメージがどうしても強いですが、魚屋さんにも入ってもらっていますし、肉も福島牛や麓山高原豚などを揃えています。冬場に鍋の具材を買いに来たお客様のために鍋つゆも置いてみたり。大手のスーパーマーケットのようにはいきませんけど、直売所でここまでいろんなものが揃う店はそんなにないんじゃないですかね。」

「お客さんをがっかりさせたくないんです」

JAの職員となり約30年。店舗運営に関わって数年になる遠藤店長。「販売は素人ですから」と謙遜しますが、一つでも多くの野菜を売るために、店づくりにはさまざまな工夫を凝らしています。

「直売所というのは基本的には生産者に販売場所を貸すという仕組みですから、まずは農家さん自身が売れるような努力をしてくれることが前提です。目立つように何か特別なシールを貼るとかね。

ただ、同じ店の中でも、やっぱり目につきやすい棚もあればそうではない棚もありますから、そこは店員が、“今入荷しましたよ”などと声がけをしながら売っていきます。それから、鍋用に白菜を買いに来る人が多いようなら、その近くにネギを置いてあげるとか、1日でどんどん鮮度が下がってしまう葉物は手前に置いて、日持ちがする根菜は奥のほうに置くとか。入荷量や売れ行きによって毎日のように陳列を変えています。」

生産者から商品が届くのは、ほとんどが朝から午前中いっぱいにかけて。夕方に近づくにつれ、陳列する商品はどうしても少なくなります。そんななかでもお客様に満足してもらえるように。そんな想いが細やかな陳列につながっています。

並べているのは郡山市の伝統野菜「阿久津曲がりねぎ」

「せっかく来ていただいたのに、“これしかないのか”ってがっかりさせたくないんです。1回目なら“今日はしょうがない”で済むかもしれませんけど、2回目もそうだったら、3回目はもうないでしょうね。お客さんが手ぶらで帰ることがないような、何かしら欲しいものがあったと思ってもらえるような陳列は常に考えています。」

とはいえ、野菜や果物は生もの。天候によって予定していた入荷がされないこともあり、売り場づくりは日々苦労を伴うといいます。

「我々が扱っているのは工業製品ではないのでね。でも、それが面白いところなんじゃないのかな。毎日のように変化があるからこそ、仕事として続けられるんだと思います。1日のかなりの時間を過ごす場所ですから、まずは私たちが楽しまなければいけないですよね。スタッフ全員がそんな気持ちで仕事に取り組んでほしいと思っています。」

オープンから3年足らずで来場者100万人を突破

2023年12月、「あぐりあ」は、オープンからわずか2年9ヵ月で来場者100万人を突破しました。この数はレジで会計をしたお客様の数のため、実際に足を運んだ人の数はその2倍にも3倍にもなるかもしれません。

「思いのほか速く100万人を達成した感覚です。ここは街なかに近いわけではないですが、郡山カルチャーパークのすぐ近くであることは大きな要因だと思います。直売所というとお客さんの年齢層が高いイメージがあると思いますけど、ここは、カルチャーパークで遊んだ後の子ども連れのご家族など、若いお客さんが多い。他の直売所にはない特徴になっていると思います。」

2024年の3月16日・17日には3周年のイベントを開催。それ以外にも、お彼岸やお花見、ゴールデンウィークなど、季節ごとにさまざまなイベントを計画・開催しています。「コロナがあったせいで、やりたかったイベントが全然できませんでしたから」と遠藤店長。これからもさまざまなアイディアを店舗運営に活かしていく予定です。

実はご自身もコメ農家の長男である遠藤店長。今の仕事にやりがいを感じ、楽しみながらも、「いつかは実家を継がなければ」という思いも頭の片隅にあるといいます。そんな遠藤店長だからこそ、生産者とお客様の間に立った店づくりができているのかもしれません。

「農家さんは雨が降ろうが雪が降ろうが一生懸命作る。だから私たちは雨が降ろうが雪が降ろうが声を出してそれを売っていく。これしかないと思うんです。それぞれがそれぞれの立場で努力をして、お互いにウィンウィンの関係になっていけば、それがお客様のためにもプラスになるんだと思います。」

■JA福島さくら 農産物直売施設「あぐりあ」
福島県郡山市安積町成田1丁目20-1
TEL 024-945-7483
https://life.ja-group.jp/farm/market/detail?id=1007

取材日:2024.1.30
Interview / Text by 髙橋晃浩 (マデニヤル)
Photo by 佐久間正人(佐久間正人写真事務所
著作 郡山市(担当:園芸畜産振興課)


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