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震災による存続の危機を乗り越え20年。花・野・果(はなやか)パレット朝市

郡山では市内各地で朝市が開催されており、それぞれ10数組の生産者が参加していますが、出店者が多ければ多いほど問題となるのが場所の確保。販売スペースだけでなくお客様の駐車場が確保できるかも、長く続けていくうえで大きな要素となります。

毎年5月から12月まで、毎週土曜日の朝に開催されている「はなパレット朝市」の会場は、郡山市安積町、もとの国道4号線(現在の県道17号郡山停車場線)沿いにあるヤマダ電機 テックランドNew郡山南店さんの敷地内。民間企業の協力も得て20年以上にわたり運営を続けてきました。花・野・果パレット市運営協議会会長の吉田長一郎さんに、これまでの歴史や独自の取り組みについてお話を伺いました。

大型家電量販店が地域貢献で場所を提供

花・野・果パレット朝市は、もともと郡山市東部体育館で開催されていた「夕焼け市」がその始まりでした。40組ほどの生産者が集まる大きな朝市に育つ中、「もっと広いところで市を開こう」と2001年からはビッグパレットふくしまの敷地内に場所を移転。同時に「花・野・果パレット」として新たなスタートを切りました。

しかし、2011年の東日本大震災が朝市にも大きな影響を与えることになります。ビッグパレットふくしまが浜通りから避難してきた方々の避難所となり、朝市が開けなくなったのです。

なんとか朝市を続ける方法はないか。会長の吉田さんが奔走する中で候補に挙がったのが、ヤマダ電機さんの駐車場でした。知り合いを通じて交渉したところ、「地域貢献の一環」との観点からヤマダ電機さんが無償での場所提供を快諾。震災直後の混乱の中、また、風評被害が広がり郡山の生産者も大きな打撃を受ける中、2011年も例年通り5月からの朝市開催が実現しました。

不要となった場所代を「大感謝祭」でお客様に還元

(吉田長一郎会長)

ヤマダ電機さんの駐車場は、その広さはもちろん、大部分が建物に覆われているため雨をしのぐことができる点でも大きなメリットがありました。

「以前は雨の日にはテントを張って開催するなど手間がかかっていましたが、ここなら屋根のあるスペースを使うことができます。また、ビッグパレットの時には県に場所の使用料を支払って使っていましたが、ここは無償で貸していただいていますので、金銭的な負担も心配いらなくなりました。かからなくなった場所代はお客様に還元しようということで、2011年以降は毎年10月の最終週に「大感謝祭」というイベントを開催しています。

イベントでは、お客様にいも煮や新米を振舞い、喜んでいただいています。コロナ以降は持ち帰って食べていただくようになってしまいましたが、早くまたみなさんにこの場所で楽しんでいただけるようになってほしいですね。」

さらに、ヤマダ電機さんでは店内に朝市のチラシを掲出するなど告知面でも協力し、まさに地域貢献の一翼を担う取り組みをされています。お客様の中には「お店に貼られているチラシを見て来た」という方も少なくないとか。地域と企業が手を取り合って地産地消に取り組んでいます。

「ここに来ればあの人の野菜が買える」という付加価値を

朝市は、5月から10月は朝6時に、11月と12月は朝6時30分にオープンし、同時に多くのお客様が訪れます。お客様は生産者のみなさんと顔を合わせ、言葉を交わしながら、旬の野菜や果物を買い求めます。常連のお客様も多く、駐車場には和やかな雰囲気が広がります。

「顔馴染みの人達と話ができるというのがうれしいですね。常連のお客様だけでなく、大通り沿いでやっているせいか新しいお客様も少なくないですし、近場のお客様はもちろん、田村町や三穂田町など比較的遠くから来てくれるお客様もいます。」

出店する生産者はみなさんお揃いのエプロンでお客様を出迎えます。参加する生産者の数は確かに減ってきてはいますが、震災による場所の変更などを共に乗り越えてきたせいか、仲間同士のつながりの強さを感じます。オープンから約30分が経ちお客様の波が去ると、生産者のみなさんが笑い合いながら品物を物々交換するほほえましい様子も見ることができました。

ある出店者の方は、これからの花・野・果パレットの運営についてこう言います。

「会員の年齢が上がってきていることもあり、なかなか新しいチャレンジができない状況もあります。でも、一人ひとりがそれぞれ特徴を持つ生産者なので、ただ出店の数が減っていくのを見ているだけではもったいない。花・野・果パレットに来ればあの人に会える、あの人の品物が買えるという付加価値をお客様に常に意識してもらえるようにしていきたいと思っています。」

生産者の中にはお孫さん連れでお店を出しに来た方も。ずっと受け継ぎ残していきたい地域の風景の一コマがそこにはありました。

※写真撮影時のみマスクを外していただきました。通常の市場運営は新型コロナウイルス感染対策を施したうえで開催されています。


花・野・果パレット朝市

■場所
ヤマダ電機 テックランドNew郡山南店駐車場(福島県郡山市安積町荒井字方八丁33-1)

■2022年の開催日時
5/21(土)よりオープン
5月~10月の毎週土曜日/午前6時~7時
11月~12月の毎週土曜日/午前6時30分~7時

※8/11(木)は「お盆の花市」開催 
※10/29(土)は「お客様大感謝祭」開催

2022.5.16 公開
Interview / Text by 髙橋晃浩 (マデニヤル)
Photo by 佐久間正人(佐久間正人写真事務所

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