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「鮮度、安さ、サービス。3拍子揃ったところが朝市の魅力」。郡山東部ニュータウン朝市

郡山駅から東に約5kmの高台に広がる郡山東部ニュータウン。郡山市内で働く人々のベッドタウンとして1989年に誕生した、福島県中部で最大級の規模を誇るニュータウンです。

5月から12月までの毎週日曜朝、ニュータウンの一角にある東部地域子育て支援センターの駐車場にはちょっとした賑わいが生まれます。朝も明けきらぬうちに集まってきたのは車いっぱいに商品を詰め込んだ生産者の方々。この日は14組の生産者さんが集まりました。

手際よく野菜や果物が並べられる中、駐車場の周辺には少しずつ人の姿が増えはじめます。朝6時のスタートの合図は笛の音。東部ニュータウン朝市のはじまりです。

郡山市東部地域の新鮮な野菜や果物が並ぶ

東部ニュータウン朝市がスタートしたのは1994年のこと。もともと市内田村町にある郡山市東部体育館で開催されていた朝市から派生して始まりました。はじめは市内中田町の生産者のみなさんが中心となり、その後、より幅広い種類の野菜や果物をお客様に提供したいと市内田村町の生産者にも声をかけ、出店の輪が拡大。最も多い時で60数組もの生産者が参加する大きな朝市へと成長します。

「あの頃はもうこの敷地がギチギチになるぐらいに農家が集まって、賑やかでしたね。」

当時を知る郡山東部ニュータウン朝市運営協議会会長の芳賀勝雄さんはそう当時を振り返ります。

(芳賀勝雄さん)

即席の店先に並ぶのは、生産者のみなさんがそれぞれの畑から収穫してきたばかりの新鮮な作物ばかり。郡山市東部では、野菜の他にりんごや桃、ブドウなども栽培されており、時期によってはそうした果物も並びます。他では決して手に入らない、まさにもぎたての味です。

「いつも買ってもらってるといろいろあげたくなっちゃう(笑)」

ニュータウン内はもちろん、広く郡山東部一帯から訪れるお客様。その様子を見ていると、ただ商品を選ぶだけではなく、生産者のみなさんと楽しく言葉を交わしながら品定めをする方が多く見られました。

「常連のお客さんは、誰から何を買うのかだいたい決めて来ている人が多いと思います。買いに来るっていうのもあるけど、会いに来る感じ。私たちも来てもらえるとうれしいもんだから、“これも持っていきな、いいからこれもほら!”ってなります。しょっちゅう買ってもらってると、こっちもいろいろあげたくなっちゃって(笑)。」

(岡部正江さん)

そう話すのは、副会長の岡部正江さん。ご両親からこの朝市を引き継いだ2代目の出店者です。しかし、岡部さんのような後継者がいる生産者はとても珍しい存在。農家の減少と比例して、この朝市に参加する生産者の数も減少の一途をたどっています。

参加生産者の減少に追い打ちをかけた東日本大震災

現在この朝市に参加するのは18軒の生産者の方々。作物の生育状況や作業の忙しさ、体調などもあり、18軒すべてが出揃うことはなかなかありません。

「一番の原因はやっぱり高齢化ですね。奥さんは出店を続けたいと思っていても旦那さんが亡くなって車で来ることが難しくなったり、かといって忙しく働いているお子さんには声をかけづらかったり。そういう生産者は多いと思います。そこに追い打ちをかけたのが東日本大震災です。震災後だけで10数組の生産者さんがやめていきました。」

こちらもご両親の代からこの朝市に参加し、2019年には『フロンティアファーマーズ』にもご登場いただいた力丸哲さんはそう語ります。今は朝市の役員の一人でもある力丸さん。関わるからには朝市のために何かを果たしたい。そう思いながらこの役割に取り組んでいると話してくれました。芳賀会長は「一番若く、一番朝市に貢献してくれている。いないと困る存在」と力丸さんを評します。

(力丸哲さん)

そんな力丸さんの尽力もあり、最近では少しずつ新しい生産者の参加も見られるようになってきました。

「これからもできるだけ多くの農家さんに声をかけ、この場が続くようにしていかないといけない。それが自分の一番の役割ですね。」

力丸さんは最後に力強くそう語ってくれました。

地域の交流の場としても貴重な朝市

6時のオープンと同時に賑わった朝市も、20分ほど経つと多くの品物が売れ、お客さん達もそれぞれの家に帰っていきます。その表情は一様に笑顔で、ここでのおしゃべりのひとときがいかに地域の人々に根差しているかがわかります。働き盛りの世代でこの地に住まいを持った人たちが徐々に高齢化する中、交流の場としてもこの朝市は貴重な存在となっているようです。

「直売所よりも畑に近くて新鮮だし、農家さんから直接買えるから安いし、サービスもいい。朝市って3拍子揃った場所なんです。」

岡部さんは、朝市の魅力をそう語ります。29年目を迎える東部ニュータウン朝市は、新しい仲間の力を得ながら、この先も地域に笑顔をもたらす場として賑わい続けます。

※写真撮影時のみマスクを外していただきました。通常の市場運営は新型コロナウイルス感染対策を施したうえで開催されています。


東部ニュータウン朝市

■場所
東部地域子育て支援センター駐車場(福島県郡山市緑ケ丘東3-2-1)

■2022年度 開催日時
5月15日(日)よりオープン
5月~10月の毎週日曜日/午前6時〜
11月~12月の毎週日曜日/午前6時30分〜

※8月12日(金)、9月20日(火)は「花市」
※出店者の取扱い品がなくなり次第、終了します。

2022.5.9 公開
Interview / Text by 髙橋晃浩マデニヤル
Photo by 佐久間正人(佐久間正人写真事務所


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