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生産者インタビュー

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フロンティアファーマーズのメインコンテンツ。福島県郡山市で農業を営む皆さんにインタビュー取材しました。彼らがどのように「農」に取り組み、受け継ぎ、繋いでいるのか。彼らの生の言葉で…
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#インタビュー

#17 いつかうねめ牛を松坂牛や米沢牛のようなブランドに。父と競い腕を磨く若手肥育農家の挑戦

有限会社武田ファーム 武田侑也さん 郡山が全国に誇る銘柄牛「うねめ牛」。生後約10ヶ月で買ってきた子牛を市内で約20ヶ月にわたり育て、肉質等級「4」以上を獲得した牛の中から、さらに質・グレードが優れているものだけにその名が与えられ、飲食店や小売店へと流通されます。繊細な肉質が特徴で、しっかりとした食感がありつつ脂の重さを感じない、柔らかくなめらかな口当たりの牛肉です。松坂牛や米沢牛といった全国的に有名なブランド牛と同じく、前提は雌牛であること。郡山の豊かな自然のもと愛情たっ

#11 「中途半端な気持ちでは農家は務まらない」―お客様から信頼を集める本気の梨づくり

伊藤梨園 伊藤正且さん 県内の農業振興を目的に次代を担い地域のリーダーとなる農業者を育成する「福島県農業総合センター 農業短期大学校(アグリカレッジ福島)」。1935年に「福島県立修練農場」として開設後、幾度かの組織変更を経て1988年から現校名となり、毎年数十名の農業を志す若者が、県内各地からその学びの門を叩いています。 アグリカレッジ福島の卒業生の多くは今、県内各地で農業や農業関連産業、食品産業などに従事しており、地域の食を支えるキーパーソンとして活躍しています。郡山

#10 「うちのブドウだけで作ったワインを飲みたい」―44年のノウハウを活かして挑むワイン用品種栽培

中尾ぶどう園 中尾秀明さん 果樹王国・福島における6次産業化推進を目的に、公益財団法人三菱商事復興支援財団の支援のもと2015年に完成した「ふくしま逢瀬ワイナリー」。郡山の市街地から湖南町へと抜ける三森峠の麓で、果実酒の生産から醸造、販売までを一貫で企画運営しています。2016年からシードルやリキュールの販売をスタート。2019年にはいよいよ郡山産ブドウを使ったワイン「Vin de Ollage」が発売され、ワイナリーとしての実績を少しずつ積み上げています。 現在、「Vi

#9 「なくてはならないものを作りシンプルに暮らしたい」—地域の人々に支えられ家族で歩む農業の道

株式会社あぶくま商会 百目鬼昭徳さん、綾子さん スマートフォンがどれだけ普及しても、AIがどれだけ発達しても、インターネットがどれだけ知的好奇心をくすぐっても、日々の生活において変わらず欠かせないもの。「食」の存在はまさに、私たちの命に直結する、なくてはならないものです。 そんな「食」を生み出す農業の魅力に気づき、東京から郡山に居を移して農業に取り組むご夫婦が郡山にいます。百目鬼昭徳さん・綾子さんご夫妻。昭徳さんはかつてIT業界で働いていましたが、2014年、綾子さんの実

#8 「やるつもりがなかった」農業。3年でブランド化から店舗運営へ。広がり続ける女性養蜂家の夢

Oriy’s HONEY 代表 折笠ルミ子さん 農業は、他の第一次産業に比べて従事者に占める女性の割合が高いと言われています。また、近年盛んな農産物の6次産業化においても、女性ならではのセンスと感性を味やパッケージに活かした商品が多く生み出されるなど、農業における女性活躍の場は格段に広がっています。 そんな中、福島県農林水産部では、県内で農業に従事する女性たちが相互に交流し経験や情報を共有することで県の農産物の魅力を高めていこうと、2016年7月に「ふくしま農業女子ネット

#7 経営力を身につけ前進を続ける9代目。 夢は“いつか片平をイチゴの里に”

有限会社うねめ農場 代表取締役 伊東敏浩さん うねめ伝説発祥の地である郡山市片平町。采女神社や采女が身を投げたといわれる山の井清水、采女を見初めた葛城王を祀る王宮伊豆神社など、伝説にちなんだ名所が町内に点在しています。 その王宮伊豆神社にほど近い場所に、今回お邪魔したうねめ農場さんの立派なビニールハウスが立ち並んでいます。最も大きいハウスは1棟およそ80mという長さです。経営するのは伊東敏浩さん。農家としてご自身で9代目。一度お寺が火事になってしまったためそれ以前のルーツ

#6 美容師から農業へ転身し10年。 野菜作りへの情熱を支え続ける「強く高い志」

有限会社ニッケイファーム 大竹秀世さん 前回の「フロンティアファーマーズ」に登場してくださった鈴木農場さんの存在と取り組みは今、郡山の農業界にしっかり根を張り、仲間同士の横のつながりや後進の育成にもつながっています。 今回ご登場いただくニッケイファームの大竹秀世さんも、鈴木農場さんで農業の指導を受けた経験をお持ちの一人です。この道を志して10年あまり。無農薬・無化学肥料での野菜作りにこだわり、今では年間約100種類もの作物を生産する、郡山の農業の未来を担う期待の若手の1人

#5 郡山の農業の未来を担う“一番星”。 ブランド野菜を育てた父の背中を追い生産者の道へ

鈴木農場 鈴木智哉さん 農業界全体にとって深刻な問題である生産者の高齢化と後継者不足。農林水産省のデータによれば、年齢別の就業者数で見た場合、49歳までの農業就業者の数は全体のわずか16%。約7割を60代以上が占めています。一方、若手の新規就農者数は伸び悩んでおり、その流れに歯止めがかかる気配はありません。 そんな中、2017年、大学卒業後すぐに就農した期待の若手生産者が郡山にいます。彼の名は、鈴木智哉さん。「万吉どん」「佐助ナス」「あこや姫」など人気の郡山ブランド野菜を

#4 始まりは父が建てたビニールハウス。 試行錯誤し辿り着いた、深く甘い「うねめの里大葉」の味

有限会社郡山アグリサービス 代表取締役社長 遠藤喜敬さん 明治時代に誕生した安積疏水は、水利が悪く稲作に適さなかった郡山の土地を猪苗代湖の水によって潤し、豊かな水田地帯へと大きく変貌させました。2017年における郡山市の市町村別水稲収穫量は全国15位(2018年2月28日農林水産省公表)。県内一の米どころとして全国でも毎年上位に名を連ねています。 一方、国の減反政策を受けて長年携わってきたコメの生産をやめ、あるいは縮小して、新たな作物の生産に挑んだ生産者も、ここ郡山にはい

#3 祖父が拓き父が育てたりんご畑。 受け継ぐ3代目が胸に抱くのは「守る決意」

力丸果樹園 力丸哲さん JR水郡線谷田川駅のほど近く、国道49号線から須賀川方面へ折れる細い山道をたどっていくと、やがて広々としたりんご畑が目の前に現れます。東に宇津峰山の頂を見上げ、西に安積平野を見下ろす、この美しいロケーションで果樹園を営むのは、力丸さんご一家。40年余り前、代々生業としてきた養蚕からりんごと桃の栽培にシフト。現在農園を仕切る哲さんは、果樹農家としては3代目にあたります。 阿武隈高地の山すそに位置するこの地域は山あり谷ありで、もともとは広い農地を確保す

#2 300年・15代続く農家がピンチを乗り越えたどり着いた 「里の放牧豚」、絶品の旨味

株式会社ふるや農園 代表取締役 降矢セツ子さん 「私、豚のことなんて何も知らなかったのよ。」 そう言いながらハハハと笑う「ふるや農園」の代表取締役、降矢セツ子さん。郡山市田村町、阿武隈高地の山懐で300年・15代続く農家に嫁ぎ、40年余りになります。1982年にカイワレの大規模な水耕栽培を開始。近年はいちごの通年栽培に取り組み、凍らせたいちごをそのままかき氷にした「かきいちご」も人気ですが、もうひとつ、このふるや農園の経営の大きな柱となっているのが「放牧豚」。郡山市内でた

#1 渋谷生まれの元ライターが湖南で育てる「トマトの宝石箱」

株式会社美農然 代表取締役 齋藤章輔さん 福島県内で新たに農業に従事した人の数は、2017年度で211人(福島県農林水産部農業担い手課調べ)。東日本大震災以降、その数は大きく減少していましたが、2016年に震災以前の水準に戻りました。Iターンによる新規就農者も少なくなく、震災後の福島の農業を静かに、力強く支えてくれています。 郡山市湖南町福良の集落から、猪苗代湖の数ある浜の中でもとりわけ明媚な風光で知られる青松浜へ抜ける一本道。正面に磐梯山を望むその道から少し東にある10