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生産者インタビュー

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フロンティアファーマーズのメインコンテンツ。福島県郡山市で農業を営む皆さんにインタビュー取材しました。彼らがどのように「農」に取り組み、受け継ぎ、繋いでいるのか。彼らの生の言葉で… もっと読む
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記事一覧

#47 結婚し妻の実家の跡取りに。チャレンジ精神旺盛な義父のもとトマトづくりの腕を磨く。

栁田竜二さん 多くの生産者にとって悩みの種となっている後継者問題。農林水産省が発表した「令和4年新規就農者調査結果」によると、令和4年に新規就農した人の数は全国で4万5,840人。前年に比べ12.3%の減少となりました。そのうち、家業等の後継者として農業を継いだ人の数は約3万1,400人。近年で最も多かった2015年の約5万1,000人に比べて約4割減少しただけでなく、その約7割を60歳以上の方が占めました。家業としての農業を持続的に承継できる若い後継者の確保は、多くの生産

#46 父が育てた土が生み出す甘く瑞々しいアスパラガス。その味を継ぎ、生まれ育った風景を守りたい。

松浦農園 松浦 昇さん ギリシャ語で「新芽」を意味するアスパラガス。その名の通り、地表に顔を出して数日の新芽のうちに収穫されます。成長し過ぎると硬さが増して食べられなくなるため、生産者はその成長に細やかに目を配ります。 福島県におけるアスパラガスの生産は会津地方で特に盛んですが、郡山でもおいしいアスパラガスが多く栽培・出荷されています。市内田村町守山の松浦昇さんは、郡山を代表する若手アスパラガス生産者の一人。ハウス24棟に加え、6,000㎡の土地を使い露地栽培にも取り組ん

#45 「良いところは残しつつ時代に合わせアップデートを」。未経験から飛び込んだ肥育農家3代目の挑戦。

肥育農家 佐々木顕仁さん 福島県産の牛肉の中でも、脂肪の混ざり具合や肉のきめ細かさで特に優れた黒毛和牛だけが名乗ることができる「福島牛」のブランド。そこからさらに高い肉質であることを示す4等級以上の肉は「銘柄福島牛」として市場で高く取引されます。 ここ20年ほどで急速に宅地や商業地の開発が進んだ郡山市の八山田エリア。その外れに、開発の時の流れをひととき忘れさせる風景が残っています。佐々木顕仁さんは、この地で半世紀以上続く肥育農家(家畜市場で子牛を購入・飼育し食肉処理施設に

#44 「ひとまずやってみる。合わないならやめればいい」――予約が絶えないイチゴの味を支える柔らかな取り組み

イチゴ農家 栁沼宏樹さん 2022年末、福島県で20年ぶりに開発された新種のイチゴが市場に登場しました。その名は「ゆうやけベリー」。「とちおとめ」と「かおり野」の2品種を交配して生まれました。開発に費やした歳月は10年。満を持してのスタートです。 生産初年度となった2022年シーズンにこのゆうやけベリーを手掛けたのは、県内各地から選ばれた14の生産者。郡山市片平町の栁沼宏樹さんはそのうちの一人です。片平町内に11棟のビニールハウスを持ち、年間約7トンのイチゴを生産していま

#43 アニマルウェルフェアに基づくストレスのない環境から生まれる「本宮烏骨鶏」の平飼い卵。その濃厚な味わい

一般社団法人本宮烏骨鶏生産組合 鶏舎リーダー 大塚利明さん 近年、スーパーや農産物直売所の卵売り場で「平飼い」の文字を目にする機会が増えてきました。平飼いとは、鶏卵の生産において長く一般的な飼育方法となっている「ケージ飼い」ではなく、鶏たちに十分な活動スペースを与え自然に近い形でストレスなく産卵を促す飼育方法のことです。 安心・安全な食品を求める消費者が増える中、家畜にとって快適な環境で飼育しストレスや疾病を減らすことで安全な畜産物の生産につなげる「アニマルウェルフェア」

#42 120年続く「阿久津曲がりねぎ」のおいしさを次の世代へ。親子で取り組む伝統野菜の継承

阿久津曲がりねぎ保存会 橋本昌幸さん、橋本典彦さん 郡山市の伝統野菜として知られる「阿久津曲がりねぎ」。名前の通り、スーパーなどでよく見かけるまっすぐなねぎとは違い、大きな弧を描いた姿をしています。郡山市の中心部から北東へ約3km。阿武隈川の東岸に位置する阿久津町では、今からおよそ120年前からこのねぎが作られてきました。 2022年2月、阿久津曲がりねぎは、農林水産省の「地理的表示(GI)保護制度」に登録されました。地理的表示(GI)保護制度とは、「地域ならではの自然的

♯41 「この地の田んぼを減らしたくない―」。安積疏水140年の歴史をつなぐ女性生産者の想い

鈴木農園 鈴木麻友さん 郡山の広く美しい田園風景を支える母なる水路、安積疏水。2022年、通水140年の節目を迎えました。高低差を生かして猪苗代湖から郡山盆地へと流れ下るその水路は市内西部一帯に広範囲に張り巡らされ、郡山を全国屈指の米どころへと育てました。 市内安積町で長く米作りを手掛ける鈴木農園では、そんな安積疏水の豊かな流れに守られながら、代々家族で米作りに励んできました。田んぼは安積町のあちこちに広がり、その面積は62町歩を誇ります。 田んぼにお邪魔すると、若い女

♯40 横浜から母のふるさと郡山へ。農業は「自分のやり方一つで未来をいくらでも変えられる仕事」

きゅうり農家 濵野 泰之さん 郡山市東部、市街地から見て阿武隈川の対岸に位置する横川町。郡山駅から直線距離で2kmあまりの近さですが、起伏のある土地には今も多くの緑が残ります。 「以前このあたりの酸素濃度を測ったら、酸素カプセルに近いほどの酸素濃度がありました。そのせいか、他の場所からここに来て泊まると、みなさん“熟睡できる”と言ってくれるんです。」 そう教えてくれたのは、この地で2018年に農業を始め、現在主にきゅうりを栽培する濵野泰之さん。きゅうりは成長が非常に速く

♯39 「まずは自分が楽しむこと」で生まれる、みずみずしさ際立つ「おとなのピーマン」

floating gold farmers 荒谷瑞穂さん 小野町を含む田村地域一帯は全国有数の葉タバコの生産地。都道府県別の生産量で福島県は毎年上位にランクインし、その多くが田村地域で生産されてきました。しかし、喫煙人口の減少に加えて東日本大震災、さらにそれに伴う原発事故の影響で、葉タバコ農家の数は大きく減少。代わってこの地域で近年大きく生産量を増やしているのがピーマンです。 荒谷瑞穂さんも、生まれ育った小野町でピーマンを手掛ける生産者の一人。2021年から本格的に野菜作

♯38 40代1,200年続く旧家を受け継ぐ気鋭の経営者。震災を経て辿り着いた「必要とされるものを作る」農業

株式会社なかた農園 中田幸治さん 郡山市内で収穫される農産物の中には、市や県の枠を飛び越え全国の多くの人々の食を人知れず支えるものもたくさんあります。5年目を迎えたフロンティアファーマーズ。今年度第一回にご紹介するのは、そんな野菜を作る「なかた農園」の代表、中田幸治さん。25名の従業員を抱える気鋭の農業経営者です。もしかしたら、これを読んでいるあなたも一度は、中田さんが作ったネギを食べたことがあるかもしれません。 40代、1200年を超える歴史を持つという旧家に生まれ育っ

♯37 湖南の地で挑む前例のないブドウ作り。厳しい冬の寒さが生み出すここだけのシャルドネの味

jardin du lac 小山順平さん 郡山市随一の絶景スポット、湖南町の「布引風の高原」。標高約1,000m 。33基の巨大風車が建ち並び、日本最大級の風力発電施設がある高原として知られています。眼下に猪苗代湖、その先には磐梯山を見渡し、夏はひまわり、秋はコスモスの花が彩る人気の観光地です。 その布引風の高原を見上げる田園地帯の一角に、若々しい枝を伸ばすブドウ畑が広がっています。植えられているのは、白ワインの代表品種「シャルドネ」。その数は約1,000本にも及びます。

♯36 長野生まれの新進イチゴ農家。セオリーに頼らず独自のスタンスで追及する理想の味

farm.舞木 宮島清人さん 日当たり、風、気温、土質。同じ作物でも自然環境一つで味や出来映えは大きく変わります。生産者のみなさんは、自分に与えられた環境の中でその気候に適応し、ベストな作物を私たちに届けるために日々努力や研究を重ねています。 三春町下舞木で2020年からイチゴ栽培に取り組む宮島清人さんは、まさに今、その研究と実験を重ね、理想のイチゴを生み出そうとトライする生産者の一人。お話を聞くと、将来の規模拡大に向けて綿密に、かつ慎重に研究に励む姿が見えてきました。

#35 大の野菜嫌いが御前人参に魅せられ専業農家へ。先人達が育てた土の力で日本一の人参を作る

株式会社agrity 小野寺 淳さん 「磐梯おろし」とも呼ばれる冷たい西風にさらされる冬の郡山盆地。その風は時に荒ぶり人々を悩ませますが、こと農業においては、風の冷たさが甘みの豊かな冬野菜を育てることにつながっています。 郡山市逢瀬町で野菜やコメを育てる小野寺淳さん。彼が農業に邁進するきっかけとなったのは、まさにそんな寒風の中で育つ甘さ際立つ郡山ブランド野菜「御前人参」との出会いでした。 兼業でスタートし、会社を設立して専業へ。さらに自ら育てた野菜を使ったレストランをオ

♯34 農家ライブに食育イベント。独自の視点で発信する「野菜を伝える活動、野菜で伝える活動」

設楽農園 設楽哲也さん イベントやマルシェへの出店、SNSなどを通じ、栽培のこだわりや食材の楽しみ方を積極的に発信する生産者が増えています。おいしい食べ方や普段触れることのない農作業の裏話を聞く体験は、新しい発見の喜びや感動を私たち消費者に与えてくれます。 須賀川市でねぎやきゅうり、コメ、里芋などを生産する設楽哲也さんもそんな発信を続ける生産者の一人。しかし、その発信スタイルは他の生産者とは一味違います。意外と知らない野菜の成長の仕組みや味の秘密を紐解きながらねぎやきゅう